ハーバード大学医学部の教授がユーチューバーになってたので試聴してみた

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こんにちは、ボストンのバイオベンチャーで働いているボスサラです。

しばらくブログ更新をしていませんでしたが久しぶりに記事を書きます。

そろそろいい歳になってきましたが、家族や子供ともっと長く過ごしたいなーなんて考えたりします。

そのためには老化しなければいいのでしょうが、そんなことは可能でしょうか?

最近、ハーバード大学医学部の教授David Sinclair博士がユーチューバーになって老化についてのあれこれを話しているので試聴してみました。

David Sinclair博士について

David Sinclair博士はTIME誌「世界で最も影響力のある100人」の1人にも選出された超有名人物。略歴等はWikiにも載っているので省略。

特に老化研究で非常に有名な研究者で、著書「Lifespan」では「老化は病気で治すことができる」と断言しています。それどころか”Reverse aging”と言ってるので、むしろ“若返ること”もできるとのこと。

そして、博士自身、老化を治すためにさまざまなサプリメントを摂取していて、自ら人体実験していることも興味深いです。ちなみに、博士が飲んでいるサプリメントは著書「Lifespan」304ページ目に惜しみなく詳細に書かれているので興味のある人は見てください。

さて、そんなDavid Sinclair博士ですが今年の1月に自らのユーチューブチャンネルを立ち上げました。以前から他のユーチューバーやメディアのインタビューなどには登場していましたが、彼自身のチャンネルは初めてだと思います。

ユーチューブを試聴した感想

このリンクからDavid Sinclair博士のユーチューブチャンネルにたどり着けます。

早速、エピソード1、エピソード2を試聴してみました。

私は老化の専門家ではありませんが、専門分野外の人にもわかるように工夫されており、とても勉強になります。また、著書「Lifespan」が販売されてから数年が経っていることもあり、情報もより新しいものになるそうです。

David Sinclair博士が一人で喋るのではなく、ジャーナリストMatthew LaPlante氏(Lifespanを出版したときの共著者)と対話形式でテンポ良く話が進んでいきます。Matthew LaPlante氏のDavid Sinclair博士に対する質問がよく考えられており、研究者ではない人がきちんと理解できるように聞いてくれるのが良いところ。

もちろん全て英語ですがゆっくり、クリアな発音で話をしてくれるのでとても聞き取りやすいのも良い点だと思います。

ユーチューブだとパソコンを開く必要があって聞き流しができないですが、同じ収録のものでポッドキャスト版もあるので、それをダウンロードしておけば車の運転やランニング中にも聞くことができます。

このユーチューブ(ポッドキャスト)の良い点は全て化学的根拠に基づいていることです。

ユーチューブサイトの“Show more”をクリックし、“Links“を見ると動画でディスカッションがあった関連情報に対して全てのリンクがあり、エビデンスが示された原著論文に辿り着くことができます。

これら論文を読むことで、

ヒトのデータなのか?

他の生物のデータなのか?

データのクオリティは?

メカニズムは何か?

など、後に確認できるのでとても役に立ちます。

老化をしたくなければ「Eat less often」が一番

では、現在で最もエビデンスがある老化をしないための方法とはなんでしょう?

それは「Eat less often」=「食べる頻度を少なくする」だそうです。Fasting、つまり断食をすることが寿命を延ばすのに有効なのです。実際、酵母、ハエ、マウスなど様々な生物で断食をすることが寿命を延ばすことは証明されています。

これは断食をすることで抗老化遺伝子が発現することに起因します。

老化に関する遺伝子は数百もありますが、多く分けて以下の3つのカテゴリーに分かれます。

  1. mTOR (mammalian target of rapamycin)
  2. AMPK (AMP-activated protein kinase)
  3. Sirtuin

mTORはアミノ酸を認識して活性化すると筋肉を作ったりする役割を持っています。とても重要な遺伝子ですが、こと老化に関してはmTORの活性化を最小限にしておくことが重要です。例えば、マウスの実験ではmTORを阻害する薬剤ラパマイシンを少量与えると寿命が延びることがわかっています。

アミノ酸はタンパク質が分解されることでできるので、断食をしてタンパク質を摂らなければmTORの活性化が抑えられます。

mTORを抑えることで、オートファジーとよばれる細胞内のタンパク質を分解する機能がオンとなり、毒性を持つタンパク質などが除去されて、アルツハイマー病などの疾患にもかかりにくくなるようです。

次にAMPK。これは断食によって活性することがわかっており、インスリンの感受性を上げてグルコースを血中から除去してくれます(血液中のグルコースの値=血糖値は高いと毒性あり)。また、ミトコンドリアを増加させる働きがあります。

AMPKを活性化するメトホルミンという薬剤があり、現在糖尿病の治療薬として使われています。メトホルミンとそれ以外の薬剤で治療をしているヒトを対象に、延命効果を調査した論文ではメトホルミンを飲んでいる対象群で寿命が延びたことがわかっています。

これとは別に、メトホルミンが老化に効果があるかを示そうとしている大規模な臨床試験:Targeting Aging with Metformin (TAME) Trialが現在行われているそうなので、結果が楽しみですね。

最後にヒトでは7種類あるSirtuin(サーチュイン)ファミリー。このSirtuinも断食で活性化することがわかっていて、エピジェネティックな制御で寿命を延ばすのに関連遺伝子を活性化します。

最初は酵母の寿命を延ばす遺伝子は何か?というとことからスタートしてSirtuinに相当する遺伝子、Sir2 (silent information regulation 2)を発見したことが始まり。Sirtuinは、今では酵母だけでなく、ハエ、マウスそしてヒトでも寿命を延ばすのに重要な遺伝子であることがわかっています。

SirtuinはDavid Sinclair博士が研究していることもあり、ユーチューブで詳細に解説があります。

このように、断食をすることで上記3つの遺伝子が老化防止、寿命延命にプラスに働くようになります。

なるほど、断食ができるかどうかは別として(笑)勉強になりますね。個人的には朝食を抜くと14〜16時間のプチ断食になり、比較的簡単なので実践してみようと思います。

最後に

ハーバード大学教授のユーチューブが無料で見られるなんてすごい時代になりましたね。

David Sinclair博士のユーチューブのサイトを見ると、2022年2月11日の時点で6つのエピソードがあります。私は全部聞いていますが、博士が今考えていることがわかってとても興味深いですね。話題のサプリNMNについても当然ディスカッションあり。

興味がある人は全部聞いてみてもいいのではないでしょうか。

今後のエピソードも楽しみですね!

*個々の状況、ライフスタイルによって合う合わないがあるので、激しい断食やサプリメントを摂取する前にかかりつけのお医者さんに相談しましょう。この記事に基づく直接、および間接的に生じたいかなるトラブルに対しても私ボスサラは責任を取れません。

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