最近のバイオテック市場の動向が興味深いので調べてみた

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こんにちは、個人投資家のボスサラです。

Twitterでも触れましたがアメリカ証券取引所に上場している中小企業のバイオテック銘柄(ティッカーシンボル:XBI)は2021年1月から約40%も暴落しているとのことです。

一方、以前の記事(ボストンのバイオベンチャーへの転職は今からチャンスだ!)ではマサチューセッツ州におけるバイオテック業界でのベンチャーキャピタル(VC)の投資額は増え続けていました。

プライベートバイオテック市場は好調なのに対して、株式市場におけるバイオテック株は不調…

最近Nature BiotechnologyのニュースBruce Booth氏のブログでも話題になっているので、私も最近のバイオテック市場の動向を調べてみました。

2021年のVCによるバイオテック投資額は過去最高

まずは以前の記事(ボストンのバイオベンチャーへの転職は今からチャンスだ!)でふれたマサチューセッツ州のVCの投資額をみてみましょう。

記事を書いた時点では2021年の1 – 3月までの3ヶ月間に$ 4 billion以上もの資金が投資されていたので、2021年が終わる頃には単純計算で$ 16 billion以上のお金がバイオテック業界に投資されるのではないか!?と予想していました。

さて、その後はどうなったのでしょう?

以前と同じくMassBioから2021年のデータが出ているので調べてみました。

ズバリ、2021年のマサチューセッツ州におけるVCの投資額は…

図1

$ 13.66 billion でした!(図1)

予想の$ 16 billionとまではいきませんでしたが、やはりすごい投資額となりましたね。

図を見るとわかりますが、これは今までで過去最高の投資額となっています。

また、この記事によると2021年のアメリカ全体におけるVCの投資額は$ 28.45 billionとなっており、これまた過去最高の投資額です。

このようにプライベートバイオテック市場は非常に好調であることがわかります。

過去1年間の株式市場におけるバイオテック株は下落トレンドだけど…?

一方、株式市場におけるバイオテック株はどうでしょう?

過去1年間2021年3月から2022年3月までのバイオテック株のインデックスとしてよく用いられる上場投資信託(ETF)のティッカーシンボルXBIとIBBを見てみましょう。(図2)

また比較としてハイテク産業や新規上場銘柄、そしてアーク・インベストメントの創業者で天才投資家キャシーウッド氏のイノベーション関連ETFも見てみました。

今回比較したETFのティッカーシンボルと株式銘柄は以下のようになっています。

QQQ:ハイテク関連やIT関連の新興企業(Apple, Microsoftなど)

IBB:大手企業のバイオテック銘柄(Amgen, Biogenなど)

IPO:新規上場した銘柄(Uber, Airbnbなど)

XBI:中小企業のバイオテック銘柄(Moderna, Editas Medicineなど)

ARKK:破壊的イノベーション関連企業(Tesla, Coinbaseなど)

図2

図2を見るとわかるように、過去1年間でXBIとIBBはそれぞれ13.56%と33.82%下落しています。

XBIは中小企業バイオテックが多くを占めているので、大手バイオテックが大半を占めるIBBと比較してよりボラティリティが高い銘柄となっています。

この下落トレンドはバイオテック業界に良いニュースがないこと(期待されていた薬がFDAに承認されなかったらバイオテックの株価は一気にどん底に落ちます)やFDAが臨床的な調査を延期していることなど、理由付けすることはできます。

しかし、バイオテック産業だけが不調なのでしょうか?

NASDAQ100指数の値動きに連動するインデックスETF のQQQをみると横ばいかやや上昇の傾向があるので、大きなハイテク産業全体は安定しているみたいです。

一方、リスクの高いIPOやARKKを見てみるとXBIやIBBと同様に下落傾向であることがわかります。

このことから、バイオテック産業が特別下落しているのではなく、単純にリスクの高い投資対象から資金が引き上げられているだけだと考えられます。

今後バイオテック市場はどうなるの?

当たり前ですが誰にもわかりません笑

冒頭のNature BiotechnologyのニュースではEQT Life Sciencesが2022年2月にヨーロッパ最大規模となる$1.1 billionの資金を得たことを例に、今後もプライベートバイオテック市場に強気の姿勢を記事にしていました。

また、最近アーリーステージVCのAtlas Ventureが$ 450 millionもの資金を調達したニュースもあり、確かにプライベート市場ではまだまだ資金が集まっているニュースが多いです。

しかし、プライベートバイオテック市場はバブルかもしれませんし、今後はバブルが弾けるかもしれません。私の感覚的にも小さなバイオテックはとても多いと思います。

バイオテック産業は創薬だけではないので一概には言えませんが、中でも創薬に関しては無数に小さなスタートアップだけが乱立しても製薬企業が本当に価値のある会社や優れたパートナーを見つけるのが難しくなって足踏みしてしまうかもしれません。そうなると、M&Aなどが遅れる→VCがリターンを回収できない→VCがプライベートバイオテック市場に投資しなくなる、と市場にとっては良くない状況になってしまいます。

また、創薬スタートアップの株式上場(IPO)の数は増えていますが、これらの中にはまだ臨床試験の途中でFDAの承認薬がない会社も多くあります。その間に会社の収益はありませんし、かつFDAに承認される薬は年間に数十個で確率的にはとても低いことを考えると、とてもリスクが高い投資先と言えます。

ちなみに、コロナショック後の2020年前半からは2021年前半まではバイオテック産業の重要性が意識されたこともあってかXBIの株価は爆上がりていました。

しかし、2022年現在では複数の国や地域でパンデミックが落ち着きマスク着用などの制限も解除されはじめました。それに伴いバイオテック株に対する投資熱が冷めつつあるのかもしれません。

2020年前半から1年間のバイオテック株価の爆上がりは単にコロナショックでヘルスケアセクターに資金が流れただけなのでしょうか?

いずれにしてもバイオテック産業への資金の流れは今後も注目したいです。

最後に

2022年のプライベートバイオテック市場におけるVCの投資額はまだデータがないので今後も要チェックしておきます。

株式市場における過去1年間のバイオテック株価の調整は一時的なもので、長期的にはバイオテクノロジー産業を含めたイノベーションを起こそうとする産業は成長していくと信じたいですね。

この調整は一時的なものだとすると、バイオテック投資をするのは今が良い買い場になるのかも…!?

それでは良い週末を!

投資は自己責任でお願いします。この記事に基づく直接、および間接的に生じたいかなるトラブルに対しても私ボスサラは責任を取れません。

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