こんにちは、ボストンのバイオベンチャーで働いているボスサラです。
以前の記事(人生2社目の創薬スタートアップで働き始めました)から4ヶ月以上が経って仕事も少しずつ慣れてきました。
プロジェクトも順調に進んでいて、もっと人手が必要になってきました。
そこで私の会社では優秀な人材を獲得することに力を入れており、最近は私も候補者のインタビューをしています。
(つい数ヶ月前まではインタビューを受ける立場だったので不思議な感じですねw)
そんなこともあり、今回はボストン(厳密にはマサチューセッツ州)のバイオテックマーケットについて記事にします。
今後、バイオベンチャーに転職したい人の参考になれば幸いです。
最初に
最近、私が働いているスタートアップで複数の人材を募集しているのもそうですが、直感的にボストンのバイオテック業界全体的に資金が流入しているように思います。
私の知り合いのサイエンティスト、人事、投資家もみんな同じようなことを言っているので間違いなさそうです。
バイオテック業界で有名な投資家 Bruce Booth氏のブログでも、“バイオテック業界のジョブマーケットはハウジングマーケットと同じようにホットだ”と書かれていましたね。
今回、それらを裏付ける興味深いデータがMassBioのサイトから得られたので見てみましょう。
マサチューセッツ州のバイオテック業界でのベンチャーキャピタル(VC)の投資額がヤバイ
私が働いているような小さなバイオテック会社はベンチャーキャピタルの資金によって支えられています。
例えば、私が以前に働いていたスタートアップでは、シリーズA(最初の重要なベンチャーキャピタル出資を受ける段階)で$ 50 millionの資金を調達していました。
この資金を使って、実験をする研究室のスペースを確保したり、研究のための機器や試薬を購入したり、サイエンティストなどの人材を雇うことになります。
下の図に示すように、マサチューセッツ州において、VCからバイオテック業界への投資資金は年々増え続けています。
驚くことに、2020年には約$ 5.8 billionの資金が投資されており、2021年の1 – 3月までの3ヶ月の時点で、既に2019年の合計金額を超える$ 4 billion以上もの資金が投資されているのです!
(このままいくと2021年は単純計算で$ 16 billion以上のお金がバイオテック業界に?$ 50 millionで小さなバイオテックは運営できることを考えると、どれだけヤバイか規模感がわかると思います。)
もう一度、強調しておきますが、これはマサチューセッツ州のみのデータです。アメリカには他の州でもバイオテッククラスターが複数あることを考えると、バイオテック業界にものすごいキャッシュが流入していますね。
マサチューセッツ州では研究室のスペースが拡大している
さて、先ほども書いたようにVC資金の一部は研究室のスペースを確保するための費用として使われます。
バイオテック業界にいくらお金が流入しても、ボストンの土地の広さは一定なので土地代がどんどん高くなっていくことは容易に想像できるかもしれませんね。
昔からバイオテックスタートアップはKendall Square付近に多くあります。これはKendall Squareが製薬企業、ハーバードやMITなどの有名大学、VC、インキュベーターなどイノベーションを起こす環境が整ったエコシステムの中心地となっているためです。
既にKendall Square付近では数多くのスタートアップが入っていますが、需要の高さから、さらに新しい建物を作るための工事があちこちで常に行われていて、車で会社にいくときに工事中の場所を迂回するのが大変です。(もちろん、それらの建物が全て研究用のスペースになるとはわかりませんが。)
しかし、Kendall Square付近に作れるスペースにも限界があり、あまりにも土地代が高くなってきたため、最近はWatertown, Waltham, Sea Portなど、Kendall Squareから少し離れた場所や、もっと田舎の方まで研究ができる場所が増えてきています。
下の図に示すように、実際、マサチューセッツ州では研究室のスペースは2011年から現在までで面積が2倍以上になっています。
さらに、2024年までには追加で20 million square feet増えることが予想されており、ますますバイオ研究施設ができることが考えられます。
マサチューセッツ州のバイオテック業界では雇用が増え続けている
資金が豊富にあり、研究室のスペースもあるのなら、そこで働く人材も必要です。
下の図に示すように、マサチューセッツ州では2008年以降から現在まで、バイオテック業界での雇用が1.5倍以上増えていることがわかっています。(2005年以降からだと約2倍)
2020年はコロナウイルスのパンデミックであったにも関わらず、前年比で約5.5%の雇用の増加があり、合計約85,000もの雇用がありました。(コロナウイルス関連のバイオテック雇用もカウントしているはずなので、個人的には納得。)
さらに、MassBioの資料によると、控えめに計算しても、研究室スペース1000 square feetあたり、2名の従業員が必要であることが考えられるらしいです。
これが正しいと仮定すると、2024年までに研究室スペースが20 million square feet増えるため、新規に40,000人の雇用が生まれる計算になります。
ちなみに、2021年現在で一番の雇用を生み出しているのは武田薬品(Takeda)の6,750人のようで、続いてSanofiが4,000人、Biogenが2,800人となっています。(雇用トップ10ランキングは下図)
そして、MassBioの資料によると、バイオ製造業で働く従業員一人当たりの平均年収は160,000ドル以上(日本円で1600万円以上)となっているので、アカデミアで働く場合と比較すると金銭的には良い条件となっています。
最後に
いかがでしたか?
これらの情報から、バイオテック業界で仕事を探そうとしている人にとっては職を得る非常に良いチャンスで追い風になっています。
一方で働き手が必要な製薬会社とバイオテック業界内では優秀な人物は争奪戦となるため、人材確保の難しい状況が今後もしばらく続くことが予想されます。
実際、私の会社でも優秀な人材を見つけるのが難しく、オファーを出したけど他の会社からもっと良い条件でオファーがあったので来てくれない、ということがあります。(泣)
しかし、このホットなジョブマーケットはバイオベンチャーに就職を考えている人にとっては絶好のチャンスですね!
よし、実際に就職活動を始めよう!と考えている人は、以下の以前の記事
アメリカで就職活動をするときに役立つ6つのポイント【私(研究職)の体験から】
アメリカで民間企業の研究職に就くには?〜アカデミアから民間企業へ〜【①】
アメリカで民間企業の研究職に就くには?〜アカデミアから民間企業へ〜【②】
などを参考にしてみてください。
それでは良い週末を。