会社がつぶれた時に気づいたこと

キャリア

さて、前回の記事でも書きましたが、ついに今週私が働いてきたスタートアップがつぶれてしまいました。

会社がつぶれたらどうなるの?

そんな疑問にお答えします。

会社がつぶれるのは残念な出来事ですが、いろいろなことが起こっているので気づいた点や興味深かった点を記事にします。

投資家からの資金はなるべく回収

ボストンにある有名スタートアップのほどんどは投資会社(ベンチャーキャピタル:VC)から資金をもらって活動しています。投資資金は銀行からの融資とは異なり、通常は使ったお金を返す必要はありません。しかし、会社がつぶれる場合、使わずに残っているお金があれば全てVCに返さなければなりません。

そこで、真っ先に行ったことは今まで行っていたプロジェクトをいち早くストップすることでした。例えばCROや大学との共同研究でデータを得るためにはかなりのお金がかかります。これらのプロジェクトを中止することで、不要なお金を使わずに済みVCに戻るお金を確保できます。

同時に、会社の備品、特に大きな機器で価値のあるものは売却します。バイオ系の実験で必要な機器には数百万円するようなものはザラにあるので、そういったものは全て売り払います。投資家にとっては数百万円などは大した金額ではないので、少しでも回収する姿勢が重要なのかもしれません。

ちなみに機器の買い手は同じインキュベーター内にあるスタートアップや、知り合いの会社に連絡したりで探します。会社をたたむのも数週間のうちに行わないといけないため、近場で引き取ってくれる会社があるならそれが一番手っ取り早いですね。小さな機器や消耗品などはドネーションしてます。

ストックオプションは無価値になる

これは言うまでもありませんが、当然ですよねー…(泣)。まあ、もともと宝くじの感覚でしたし、所有比率としては全体の1%もないので、ストックオプションが有効になったとしても大した金額にはなりません。次回のスタートアップに期待しましょう(笑)

会社のノウハウをオークションにかける

これはうちの会社独自のアイデアらしいです。会社が今までに蓄積したノウハウを丸ごとどこかの会社にオークションをかけ、得られたお金を全額非営利団体であるLife Science Caresに寄付するという大胆なアイデアで、私の会社のCEOが思いついたらしいです。

オークションにかけたノウハウに対して一番高い値段を出した(=寄付した)会社に、一定期間、私たちの会社の情報にアクセスできる権利が与えられるという仕組みです。

オークションで最高値を示した会社名と金額は言えないみたいのですが、かなりのお金が集まったとのこと。こんなこと考えて実際に行動することができるなんて、さすが自由の国です(笑) 

私たちのやってきたことが少しでも社会に貢献できるのは嬉しいですね。(投資家はどう思ってるか分かりませんが…そんなに集まったなら金返せー!って感じにならないのでしょうかね?)

今後、これがスタートアップ”successful failure”のトレンドになるかも!?

創薬研究に有益なデータは論文にする

インダストリーでもアカデミアに勝るとも劣らない、非常に有益でインパクトがあるデータを持っています。私たちもそういったデータを持っていましたが、当然ながらそういったデータは企業秘密のため論文発表できません。今回は上述したオークションで契約した時間が経過すれば論文発表にできそうです。

ただし、今回の一番の問題点は会社がつぶれるのでリバイス実験ができない点です。これは論文を書く上では致命的なのでインパクトファクターの高いジャーナルには掲載されることは難しいでしょう。

しかし、論文を書くことで今までの成果を共有することは、個人の業績になるだけでなくサイエンティフィックコミュニティに貢献できます。アカデミア、インダストリーに関わらず、科学的に重要なデータであれば共有するという点には納得です。

論文にする予定のデータは創薬研究に非常に有益なものなので、同じGasdermin Dをターゲットにしている会社の役に立てれば嬉しいですね。

意外と仕事のお誘いがくる

実は今のスタートアップに入ったときに、CEOや他の上司のメンバーから「ボストン周辺には無数のスタートアップがあるので転職活動には困らないよー」と聞いていました。アカデミアからインダストリーの転職が非常に困難だったことから、このことに半信半疑でしたが、実際に職を失ってみてその事実を認識しつつあります。

転職活動の詳細については次回以降の記事にしますが、私の働いていた会社のメンバー全員が非常に親切で、知り合いの会社などを紹介してくれたりと、私や他のジュニアメンバーの転職活動をサポートしてくれているのです。

私なんてまだインダストリー経験が少ないにもかかわらず、意外にもたくさんのお誘いがきて正直びっくりしました。私の会社のメンバーはバイオテック業界に長くいますし、それに比例して広いネットワークを持っているのかと思います。

よくスタートアップはヒトとモノが重要といいますが、特に今回はヒトに関しての重要性を実感しています。スタートアップに就職するなら会社のコアメンバーの評判、業績、人間性も大切だと感じました。(まあこれはスタートアップに限りませんね)

最後に

会社は作るときだけでなく、つぶれるときからも多くのことを学べます。

あまり経験できることではありませんし、価値があると思い記事にしました。

他にもたくさんありますが、そろそろ眠くなってきたので続きはまた次回以降で!

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