前回の記事アメリカで民間企業の研究職に就くには?〜アカデミアから民間企業へ〜【①】を見て、アメリカ民間企業への転職準備はできたと思います。
準備ができ次第、アプリケーションを出していきましょう。LinkedInの”Apply”ボタンをポチッとして、会社のフォーマットに従うだけです。
今回はあなたのアプリケーションが無事に希望の会社に通った、次の段階の話をします。
電話インタビュー
アプリケーションの通過、第1ステップはクリアですね!おめでとうございます。
会社によって異なりますが、一般的な次のステップは電話によるインタビューです。
大きな企業では人事の人から連絡が来るでしょう。人事部がまだないような小さな会社は、誰から連絡が来てもおかしくありません。(ただし、小さなスタートアップなどはそもそも電話インタビューがないところもあります。)
通常、この電話インタビューの目的は候補者のスクリーニングです。
この段階ではまだ数多くの候補者がいるので、本当に直接会って面接が必要な人物か?を会社側は見極める必要があるのです。
私の経験からは、電話の相手は人事(もしくはそれに相当する人物)からかかってくることが多く、約30分以内の電話インタビューが多かったです。
聞かれる内容は非常にベーシックなことで細かい研究のことは聞かれません。後述するオンサイトインタビュー(招待されて現地で行うインタビュー)の質問内容と重複するものもありますが、代表的なもので私が聞かれた質問は以下のようなことでした。
- Can you describe your professional background?
“自分の専門分野について簡単に説明してもらえる?”
この質問は必ず聞かれます。いわゆるエレベーターピッチと呼ばれるやつを考えておき、自分の分野外の人にでも理解できるように説明しましょう。エレベーターに乗って降りるまでの時間(30秒〜数分程度)で簡潔に終わらせます。
- Why do you want to transition to industry from academia?
“なぜアカデミアからインダストリーに来るの?”
私の場合はハーバード大学医学部のスクリーニング施設で低分子化合物スクリーニングをしていたので創薬に興味があるという内容を膨らませて伝えました。
- Why do you want to work here? Why are you interested in changing positions and joining us? What interested you about this position?
“なぜうちの会社なの?“ ”なぜこのポジションに興味があるの?“
その会社やポジションに関してググりましょう。ホームページを見てると自分の中でこの会社のこんなところいいなぁーと思うところがいくつか出てくると思います。もしそこで働いている知り合いがいればその会社やポジションについての詳細を聞いてみるのが一番です。
- Have you had any experience in a drug discovery setting?
“ドラッグディスカバリーの経験はある?“ ”うちではXXをやってるけど、その経験はある?“
などの会社独自のシステムやアッセイに関する経験。
“どんなアッセイができるの?”
と幅広く聞かれることも。この質問には自分ができることを単に羅列しない方がいいです。それよりもその会社でどのようなアッセイが求められているのか?を理解することが大切です。前回の記事と同じ理屈ですが、私はJob descriptionの中にあるキーワードのアッセイをピンポイントで答えるように心掛けました。
- Are you legally authorized to work in the united states?
“アメリカで合法的に働くことができるの?”
これは書類審査か電話インタビューで必ず聞かれます。グリーンカード持っているか?もしくはアメリカ市民であるかどうか?という点を確認しています。向こうからは直接 “あなたはアメリカ市民ですか?“ってことは聞けないのでこういう聞き方になります。
全部は書ききれないですが他にも、
- What do you consider to be your strengths?
“あなたの強みは?“
- What are the most challenging aspects of your current job situation?
“今までで一番チャレンジングなことは?”
- Can you recall a time of conflict with a coworker? How do you solve problems with colleagues at work?
“組織の中でトラブルがあった時にどう対応した?“
これらの質問に対する答えは個人によって左右されますが、結局インタビューワーが知りたいのは、候補者の能力、経験、実績と問題解決能力です。重要なのは自分の能力、経験、実績の具体例を挙げて伝えることです。その際には問題解決能力がある点を加えましょう。
例えば、“あなたの強みは?“という質問に対して、ビッグデータのコンピューター解析を自分の強みとしている人であれば、“私はバイオインフォマティクスの経験では誰にも負けません!”とだけ言っても、あなた以外の人には伝わりません。
“XXの技術を使ってYY本の論文をZZというジャーナルに書いた経験からもわかるように〜。その過程でAAなことがありましたがBBという手法で問題解決しました。”と具体例(技術名、数字、雑誌名など)を挙げて自分の経験を語ります。同時に、その過程でどのような困難な問題があったか、またそれに対してどう対応したか、というアプローチを使います。
- Lastly, do you have any questions?
“最後になるけど、何か質問ある?”
この質問もインタビィーの最後に必ず聞かれます。質問がないとその会社に興味がないと受け取られる可能性があるので、私は必ず何か一つは質問するようにしました。あらかじめ聞くことを複数考えておきましょう。
ちなみにこれらの質問は後述のオンサイトインタビューでも、もう一度聞かれます。どうせなら電話インタビューの前にはこれら質問に対する答えをあらかじめ準備しておきましょう。
オンサイトインタビュー
電話インタビューのスクリーニングが終われば、次はいよいよオンサイトインタビューです。
ちょうどこのブログを始めた時から、コロナウイルスの影響でアメリカでの就職活動スタイルも変わってきています。
私が就職活動をしていた頃は電話インタビューの後はオンサイトインタビューが通常でしたが、最近は電話インタビューに加えてZoom等のビデオチャットソフトウェアで面接を行うこと当たり前になりました。
しかし、ビデオインタビューに関しても対策はほとんど変わらないと思います。聞かれる質問内容は同じですし、その対応も同じです。
通常、オンサイトインタビューは半日から複数日にわたって行われ、将来の自分の上司や同僚などの複数の人物と長時間かけてじっくり話をします。会社によって異なりますが一人一人の時間は約30 – 60分が通常かと思います。
一人、もしくはグループ単位で話をして、終わったら次の部屋でまた別の人、もしくはグループと話をする、というのをひたすら繰り返します。連続して行われるので常に気をぬくことができません。
そして、全員と話が終わったら自分が今までに何をやってきたかをプレゼンテーションで発表して終了という場合が多かったです。プレゼンの発表時間も会社によりますが、質疑応答を含めて通常は約30 – 60分だと思います。
オンサイトインタビューでは事前にスケジュールがわたされます。例えば以下のような感じです。
ここで重要な点はインタビューワーの名前が事前にわかることです。私はインタビューする相手の経歴をあらかじめLinkedinで調べておくことをオススメします。Linkedinには個人の経験やスキルが書いている場合が多いのであらかじめ調べておくことで、相手の自己紹介の時に余計な集中をしなくてよかったり、質問の内容が予測できる場合もあります。
オンサイトインタビューでの質問内容は電話インタビューで聞かれることと同じものが少なくありません。上記の質問内容はすでに準備しているはずです。なので、これら質問に関しては人が変わるだけで、伝えることが同じなので実はそこまで難しくありません。(私の場合、同じことを言いすぎてインタビューの間に暗記できていました(笑))
それら質問よりもオンサイトインタビューで大切なことは、一方通行ではないという点だと感じます。
実際にインタビューが始まると、まずは自己紹介からスタートし、インタビューワーが実際に携わっているプロジェクトや実務経験に関して説明をしてくれます。
それに対して、自分ならどのような貢献できるか?自分ならどのような対応をするか?を相手に伝えることができれば、“この人物を雇えば自分達にメリットがあるな”と感じてもらえるはずです。
また、相手は将来の上司、同僚になる人物です。インタビューの機会にどんなことをやっているかについて詳しく聞いておくと、実際にその会社で働く際、自分のポジションでの役割についても理解することができます。
インタビューと聞くと“何か聞かれるので答えよう”、という考えが強いかもしれませんが、実際は双方向性のディスカッションになります。
向こうはこちらを知りたがっているので質問をしてきますが、こちらからも向こうで何をやっているかについて知る姿勢を持つことが重要です。その過程で、自分ならどのような貢献ができそうかを相手側の会社に認識してもらえれば有意義なインタビューだったと言えるのではないでしょうか。
私はインタビューが終わった後、感謝の気持ちを込めてサンキューメールを送っておきました。これで成果が変わるとは思えませんが、気持ちを悪くする人はいないでしょう。
インタビューでは自分の時間だけでなく、会社側の複数メンバーの貴重な時間を使って行います。どのような結果であっても感謝の気持ちは忘れずにしましょう。
最後に
どうでしょうか?けっこう長い道のりですよね。
アプリケーションを出した後や電話インタビューの後に返事がなくても、ヘコまず出し続けましょう。
大丈夫です、私も数十以上のアプリケーションを出しましたが、返事すらないところも多かったです。電話インタビューやオンサイトインタビューでもたくさん落ちました。
電話インタビューに落ちても、次回に向けての練習と思えばいいんです。実際、私は落ちたインタビューの経験がその後のインタビューの役に立ちました。
オンサイトインタビューまでたどり着けば最終候補者の数名に選ばれていると思うので自信を持ってメンバーと会話し、プレゼンテーションを乗り越えましょう!